難所

鉛筆やペン、マーカーは日常的に使い慣れていて使用することで戸惑うことは少ない。
しかし、これが油絵となると勝手が違う。
ベタベタして乾きは遅いし、描いているうちに色は濁るし、イライラすればする程自分を見失っていくのを絵の方から知らせてくれる。
よほど、油絵と相性が良い人以外、作者を拒むかの様に難所がすぐにやってくる。
「お前、本当にオレとつきあう気あるのか?!」と試されている気がする。
それで、自分は油絵に向いてないと去っていった人を何人も見た。

ごまかしも見逃してはくれない。
乾きを早くする目的で新聞紙の上に絵の具を出し油抜きをする人、オイルに乾燥剤を大量に投入する人等、力ずくでどうにかしようとすると、
すぐにひび割れたり、隔離したり、変色したりして決して屈してはくれない。

どうやったら、油絵の長所が引き出せて、美しく発色してくれるのか?絵の具が上手く着いてくれるのか?
しばらく、面と向かった探り合いが続く。
ある日、昨日までのことがうそのように、絵の具が着き出し、美しく発色してくれる。
そうなると、自分の予想以上に、深く、鮮やかで美しく絵の具の方から答えてくれるようになる。

この難所を超えた人のみが味わえる喜びと思う。

彼女は難所を超えた様子。本人はこの感覚は…?!とまだ思っているかも…。

油絵は誰でも描けるようになります。この初めにやってくる、難所を乗り越えるまで根気強くつきあえれば…。